家具について

家具というものが、場所や部屋を構成する要素である以上、家具も建築であると言える。
家具によって、その場所がより洗練された心地のよい空間になるから。


でも、違う意味で、家具は建築だと言える。


造り付けの家具、例えば、壁に勉強机や洋服ダンスが埋めこまれている場合、
それらの家具は、家具として機能しているのと同時に、
【家の一部】としての機能も果たしている。
機能というのは、家具であると同時に間仕切り壁あるとかそういう意味。


ある場所や部屋のひとつのパーツ、要素としての家具ではなく、
その場所や部屋を成り立たせるために、必要不可欠なものとしての家具。
その家具が壁の役割も果たしているから、
その家具がなくなると壁もなくなってしまうというのが、
必要不可欠なものとしての家具の一番適切な例だと思う。


そういった必要不可欠なものとしての家具は【家具】なんだろうか。


家具も家も建築なんだと思う。
でも、そこには建築としての【質感の違い】があるのだと思う。
同じ金属でも、アルミと鉄では質感が違うのと同じように。
そして、僕らはその若干の違いを楽しんでいるのではないだろうか。
【家具】と【家】のささやかな質感の違いを。


その少しの質感の違いを楽しめなくなったら、
僕はたぶんとてもフクザツな心境になるとおもう。
建築であっても家具は【家具】であってほしい。


だから、造り付けの家具ってなんか苦手なんだよな。
家具は動かせるものであって欲しい。
【家】は動かせないけど、【家具】は動かせる。
質感の違い。


机は机としてあって欲しい。
壁に取り込まれて欲しくはない。


僕の願い。


おそらく、僕が場所や部屋として、魅力を感じる場所は
【家具】と【家】の質感の違いがとても僅かなのだと思う。
決してゼロではない。差はあるのだが、限りなくゼロに近い。
そんなところに魅力を感じているのだろう。


質感の違いがない、表現するならば【平滑でツルッとした】場所や部屋に僕は何か物足りなさを感じる。


ただそれだけ。