少し怖い話

巨大建築という欲望―権力者と建築家の20世紀

巨大建築という欲望―権力者と建築家の20世紀

少し前に図書館で借りてきた本。
時の権力者*1とその権力者をパトロンとした建築家の話。
この本にはヒットラームッソリーニからアメリカの歴代大統領に至るまで、
時の権力者として、世界を支配しようとした、もしくはしていた面々があげられ、
その権力者から仕事を貰っていた建築家として、
アルベルト・シュペーア*2フィリップ・ジョンソン*3を挙げている。


権力者が自身の権力を大衆に誇示し、認めさせる上で一番有効な手段として建築があげられる。
「手段としての建築」ということがこの本でのキーワードになっている。
建築を何かの目的のために造る、たとえば執務をするために官邸を造るとか、
そういうのではなく、ただ自分の権力を誇示し、確固たるものとするためだけに造る。
これが「手段としての建築」である。
この本は、ただひたすらその「手段としての建築」について書かれている。
そして、その「手段」において、権力者に協力した建築家について書いてある。
その建築が権力者のどのような思惑で計画され、建築家はそれに対して、どのように対応したのか、
とても暗くてドロドロとした感じが最初から終りまで延々と流れ続ける。


時の権力者に協力した建築家は、その権力者の失墜とともに共犯者になる。
建築家は権力者の頭の中で考えたことを、建築という形で具現化・象徴化する。
ファシズムという恐怖さえも目に見える形にしてしまう。
権力者の失墜とともに、権力者への憎しみは権力者の思想を形にした建築家にも波及する。
これはすごいリスクだ。
なぜこのようなリスクを背負ってまで、権力者に従い、その権力の傘下に入ろうとしたのか。
これがこの本の主題である。


自分が将来、建築に携わるからかもしれないけど、読んでいて、寒気がした。
ある意味でむちゃくちゃ怖い本かもしれない。


作者のかなりくどい比喩表現とか、よくわからんブラックジョーク的なものがあって、
読みにくいけど、2回ぐらい読み直したら、話の流れがつかめると思います。

*1:独裁者とか大統領とか会長だとかそういう類の人

*2:ドイツの建築家、ヒットラーに仕えた

*3:アメリカの建築家、政財界に顔がきいた